【小説】さまざまな「友だち」を描いた傑作:きみの友だち 重松清

きみの友だち (新潮文庫) | 清, 重松 |本 | 通販 | Amazon
  • 小説の概要

わたしは「みんな」を信じない…

交通事故で片足が不自由になった恵美ちゃん、彼女はそのことがきっかけで病気がちの女の子である由

香ちゃんと仲良くなるようになる。二人の周辺を取り巻く、様々な登場人物にスポットライトをあてた

オムニバス形式のストーリー集

  • 様々な登場人物に焦点を当てた傑作!

「きみの友だち」は重松清の作品の代表作として挙げられることが多い作品ですね。個人的にはこの作品と「疾走」「エイジ」「青い鳥」「流星ワゴン」は重松清作品のTOP5です。(一応この作品全体の)主人公である恵美ちゃんの他にも、弟である「ブンちゃん」やその友人たちが短編の主役をそれぞれ務めることになります。

中には「こんなキャラクターまで?」と思えるような、普通の小説ではほんの端役に過ぎないような登場人物が主役を務めている話も存在します。そして僕としてはそういう端役のキャラクターの話のほうが共感できるような身につまされるような気がして印象に残っています(笑)

  • 強い「孤高」の人である恵美ちゃん 

前述したように、この作品は様々登場人物の視点からの人間模様を描いた短編集ですが、それでも足を怪我した恵美ちゃんと生まれつき体が弱い由香ちゃんとの関係性は全編を通しての話の軸となっています。

その中でもやはり主人公である恵美ちゃんは別格の扱いという感じでしたね。由香ちゃんは話の都合上、特定の話には全く出てこないのですが、恵美ちゃんは全ての短編集に登場し、その全ての中で「孤高」の強い人という印象を受けました。

重松清の作品には「疾走」のエリもそうですが、こういった強い孤高の人間というものが登場することが多いように思います。老若男女に関わらず、登場人物を導いてくれるような…

しかしそんな恵美ちゃんも事故で片足が不自由になってしまったとき、そしてその後に出来たかけがえのない親友との「別れ」の際には、人間的な弱みが露わになり、決して「スーパーマン(女だけど)」ではないことも示唆されています。

  • 読んでいて身につまされるような思春期の「痛い」男子たち

この小説で少年と少女が交互に主役を務めることになるのですが、その中でも「ふらふら」の堀田ちゃん、「ぐりこ」の三好君、「別れの曲」の佐藤先輩が個人的にお気に入りの主人公達でしたね。

この3人は前述の恵美ちゃんはもちろん、その弟のブンちゃんとその親友でありライバルでもあるモトくんのような「強い」人間ではなく、「弱い」側に分類される主人公達です。しかもその弱さというのがまさに思春期あるあるのようなものばかりであり、自分の中学時代を思い出してちょっと辛かったですね(笑)。例えば人気者の名前を本人の前では苗字でしか呼べないくせに、本人がいないところでは下の名前で読んだり、部活の後輩に対して偉そうに振舞ってしまうところ、またクラスの輪に入るためにピエロを演じて媚び売ろうとする姿など、昔の自分を見ているようでいたたまれなかったです。

しかしそんな本来は小説の主役を務めるようなことなんてないはずの子供たちにもそれぞれの人生や物語が存在するのだということが、この小説からは強いメッセージとして伝わってきており、重松清の人間観が鮮明になってきます。

  • ややご都合主義的なラスト

ここまで非常に生き生きとした思春期の少年少女たちの姿が綿密に描写されてきましたが、一番最後のエピソードに関しては正直言って蛇足だったと思います(ネット上でもラストに関する否定的な感想が最も多い)。今までまるで現実のような青春物語を体験していたようだったのに、最後の描写のせいで一気にフィクションとしての小説の世界に引き戻されてしまったかのような感覚になります。

この小説は「疾走」と同じく、二人称で語られていくのですが、そのナレーターを務めている登場人物がラストで何の伏線も無しに登場してくるので正直言って戸惑ってしまいました。そんな突拍子もなく出てくる人間がなぜこれほどまでにそれぞれの登場人物たちの心理を詳しく描写することができるのだと、どうしてもご都合主義的に感じてしまうからです。

ちなみにこのご都合主義的な展開に対する不満は「疾走」に対しても同じであり、「疾走」でも終盤でシュウジのことをナレーションで「お前」と呼んでいた語り手がだれだったのかが明らかになるのですが、なぜその人物がシュウジと出会う前の、シュウジの詳細や内面についてそれほどまでに詳しく知っているのかがどうしても疑問に思えてしまうのです。

所詮は小説ではあるため、多少のご都合主義は仕方がない面があるとは思うのですが、この点に関してはそもそも語り手の存在を最後まで明らかにしない、つまり完全に「神の視点」として徹するほうがそうした違和感を解消できてよかったのではないかと思いました。

  • 総評

思春期の少年少女たちの生き生きとした感性を見事に描き切った本作は、重松清の作品が好きな人ならば間違いなく買いだと思います。僕は見たことがないのですが実写映画化もされているので、気になる方はそちらもご覧になってはいかがでしょうか。

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