【小説】14歳の少年の揺れ動く日常を描いた青春物語:エイジ 重松清

エイジ (新潮文庫) | 清, 重松 |本 | 通販 | Amazon
  • 小説の概要

桜が丘ニュータウンという町の団地の最上階に住むエイジは14歳になったばかりの中学生。

教師の父と専業主婦の母、高校生の姉の4人家族のごく普通の家庭。

しかし自分のクラスメイトが通り魔として逮捕されるという事件からエイジの周囲は静かにしかし確実

に変化していく。もう「子供」ではないが、「大人」にもなりきれない微妙な年齢の少年の心理を見事

に描写した名作。

  • 中学生の描写の巧みさ

この作品も僕が重松清の「疾走」を読んだころとほぼ同じ時期に読んだお気に入りの本ですね。この本の魅力は何といっても異常なまでに生々しい思春期の子供の心理描写の巧みさと、息が詰まるような生々しい学校生活のリアルさですね。

主人公のエイジは多少、斜に構えたところがあるけど、学校の成績は基本的に優秀で、運動でもバスケ部でレギュラーを取ることが確実視されていたような、いわゆる「いい子」です(少し中二病が入ってるけど)。

しかし「オスグット・シュラッター病」という成長期の男の子に多い、膝の病気にかかってしまいバスケ部を休部せざるをえなくなります。その際、親友である同じバスケ部の主将である岡野と衝突してしまいます。

そしてある日、自分のクラスメイトが地元で話題になっていた通り魔として逮捕されたことから彼の日常は少しづつではありますが、確実に変容していきます。

個人的にエイジの心理には当時物凄く共感でき、「重松さんはどうしてこんなに中学生の描写が上手いんだろう?」と思ったものです。特に、

どこかに行きたい。

なにか、ぽかんと抜けたような広いところに行ってみたい。

という箇所は当時まさに中二病真っ盛りであった自分も似たようなことを考えていて強く共感したものです(笑)。

  • 息苦しい学校生活と人間関係

また中学生特有の同調圧力や、微妙な友達同士の関係、例え友達であったとしても媚び売ったり、または見下したりといった描写も自分の中学時代あるあるでしたね。

小説の世界では、よく爽やかで明るい学校生活というものが舞台になりやすいと思うんですけど、個人的にはそんな学校生活を送れる人なんて極一部しかいないと思うんですよ(笑)。

実際の学園生活(僕の場合)は、もっとドロドロとしてて、さっきまで仲良くしていた相手であったとしても、その場の空気によっては掌を返して簡単に悪口を言ったり、人気者に軽んじられても、見栄を張りたくてくっつき回ろうとして結局ウザがられたりといったような痛々しいものが多いんじゃないかと思うんです。

そこらへんの描写も、本作では綿密に描かれており、まるで自分の学校生活を覗き見られていたのじゃないかと思うほど怖いぐらいにリアルでした。

タモツくんに言わせれば、この三人もB級になるんだろうか。A、B、Cの等級で見るより、派手なメジャーと地味なマイナーに分けて、マイナー系と呼んだ方がしっくりきそうだ。

こういう表面上は仲良くしているように見える相手であっても、内心では見下したり、カースト制での順位付けをしている点もあるあるですね。今風に言うなら陰キャラ、陽キャラといった具合でしょうか。こういう部分はハッキリ言って読んでいて気分のいいものではなく、カースト制の上位にいる人間の下位の人間に対する冷淡さのようなものも表現されていて自分の中学時代を思い出して嫌な汗をかきそうでした(汗)。

あとは部活内での人間関係ですね。僕もバスケ部だったんですけど、残念ながら下手糞で、また元々の性格で怠け者であることも手伝って、途中で練習に出なくなってしまいました。でも練習に出なくなったのは単に練習が面倒臭いからというだけではなくて、部活内にある同調圧力のようなものに耐えられなかったんですね。例えば朝練に出ない人間に対する冷ややかな目線などがその典型ですね。

本作でもそういった部活内特有の同調圧力やイジメについては綿密に描かれており、エイジの親友である岡野は、キャプテンになった頃から練習に厳しくなり、周囲から疎まれるようになります。そして元々エイジや岡野とは仲が良くなかった同級生のテツや3年生の先輩である富山さん達から「シカト」というイジメを受けるようになります。

岡野はそんな状況を苦にして、遠回りにエイジに部活に戻ってきてくれないかと頼むが、エイジは親友を助けるために駆けつけるなんてカッコよすぎて、カッコ悪いから絶対に嫌だとして首を縦に振ろうとしない…

個人的にどう考えてもいじめられているにも関わらず、それをイジメだとは認めようせず、誰にも助けを求めようとしない岡野の姿も中学生あるあるだと思いましたね。馬鹿にされていじめられているにも関わらずヘラヘラしてプライドを守りたがる姿というのは昔の自分を見ているようでした。怒ってイジメに立ち向かおうとすることを、自分が弱くて哀れな「いじめられっ子」なのだと認めることになってしまうと思い、それを恥ずかしくてカッコ悪いと思ってしまうこと。自分が今馬鹿にされて尊厳を踏みにじられて悲しんでいるのだということ自体を認めたくないという思い。だから目の前の現実を冷笑して、無関心を装ってプライドを守ろうとするという姿はまさに虚勢をはりたがる中二病そのものでした(笑)。

  • 淡々と流れる日常

本作では決してドラマチックな展開が起きることはありません。非日常な出来事はせいぜい中盤で主人公の友人が通り魔として逮捕されるということぐらいです。しかし淡々と描かれている日常の中で、「子供」から「大人」へと変わりつつある少年の心理描写が怖いぐらいに巧みです。

また話の終わり方も爽やかなしめくくりであり、読後感は良いものでした。

読んでいて心地よい描写は決して多くないのですが、中学生や年頃の子供を持つ親御さんには是非お勧めしたい一冊ですね。

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